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分子制御レーザー開発研究センター(2ページ) 分子研リポート2010 | 分子科学研究所

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研究施設の現状と将来計画 295

8-3 分子制御レーザー開発研究センター

8-3-1 経緯と現状,将来構想

分子制御レーザー開発研究センター(以後「レーザーセンター」)は,旧機器センターからの改組拡充によって平成9 年4月に設立された。以降,平成18年度までの10年間,分子位相制御レーザー開発研究部,放射光同期レーザー開発 研究部,特殊波長レーザー開発研究部の3研究部において所内課題研究及び調査研究を行う他,多数の共同利用機器, 小型貸出機器を維持管理し,利用者の便に供してきた。各研究部には助教授及び助手が各1名配置され,またセンター 共通の技術支援は技術課の3名の技術職員が行ってきた。放射光同期レーザー開発研究部は,分子研 U V S O R との同期 実験に向けた基礎的レーザー光学技術の開発の他,大出力紫外パルスレーザーやコヒーレントテラヘルツ光源の開発な どの成果を挙げた。特殊波長レーザー開発研究部は,分子科学の新たな展開を可能とする波長の可変な特殊波長(特に 赤外域)レーザーの開発の他,マイクロチップレーザー光源等の開発を行い,産業界からも注目される成果を挙げてきた。 分子位相制御レーザー開発研究部は,分子制御のための時間的特性を制御したレーザーの開発と反応制御実験を目的と して設置され活動を行った。

平成18年度には分子研の研究系・施設の組織改編へ向けた議論が行われたが,この中で,レーザーセンターのあり方 に強く関連する事柄は以下の2点であった。第一に,レーザーや放射光を重要な研究手段とし,光と物質との相互作用 に基づく分子科学を展開する研究領域として新たに光分子科学研究領域が設けられることになった。従来はこの研究領 域の研究が,主に分子構造,電子構造,極端紫外光科学の各研究系と,極端紫外光研究施設とレーザーセンターとに別々 に所属する研究グループによって行われてきた。しかし,この組織形態は,多くの共通した概念や方法論を基本とする 研究グループを縦割りに分断し,研究者間の情報の共有や研究活動における日常の議論を阻害する要因となっていた。 一方,レーザー光源を用いた研究グループは,17年度から始まった「エクストリーム・フォトニクス」のプログラムに より,既に当時,組織横断的なつながりを持つ機会が増えていた。そこで,この新研究領域を創設することにより,放射 光関連の研究グループとの間の壁も取り払い,本研究所における光分子科学研究をさらに活性化することを目指したの である。第二の点は機器センターの再設置であった。本研究所には以前,同センターが設置されていたが,その後,極 低温センターと化学試料室と共に廃止され,レーザーセンターと分子物質開発研究センターが設置され,後者は更に分 子スケールナノサイエンスセンターへと改組された。しかし,共通機器を一括して管理運営し,所内外の研究者の共同 利用を促進する必要が改めて認識され機器センターが再度設置されることとなった。これに伴って,レーザーセンターが 管理運営していた共通機器の大部分が機器センターに移管されることになった。

この措置により,レーザーセンターは従来の共同利用に関する業務を大幅に圧縮することができ,センターとしての活 動の重点を開発研究に移すことが可能となった。そこで改組後のレーザーセンターでは,光分子科学研究領域の研究グ ループと密接な連携をとりながら,分子研におけるレーザー関連光分子科学の開発研究の中心として機能することを重 要なミッションと考えることとなった。ただし,光分子科学研究領域の研究グループとレーザーセンターの役割の違いを 認識しておく必要がある。光分子科学研究領域の各研究グループではそれぞれの興味のもとで光分子科学の研究分野を 開拓し,先端的研究を展開するのに対して,レーザーセンターのミッションは,光分子科学の先端的研究とその将来的な 発展に必要な,光源を含む装置,方法論の開発,及びそれらの技術の蓄積に重点がおかれるべきである。光分子科学研 究領域とレーザーセンターのインタープレイにより生まれた技術や方法論を蓄積するだけではなく,開発された手法,装 置や部品を所内外に提供・共同利用に供する点で,研究領域における各グループの研究活動との差が存在する。

ただし,技術や方法論の開発段階においては,各グループの研究活動とレーザーセンターの活動を明瞭に区別するこ とは,しばしば困難である。従って,レーザーセンターと研究グループの人的な相互乗り入れは不可欠であり,平成19

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296 研究施設の現状と将来計画

年度の組織再編に際しては,光分子科学研究領域及び U V S O R に属する数名の教授・准教授がレーザーセンターに併任 する形で運営することとなった。このような組織で,光分子科学の新分野を切り拓くための装置,方法論の開発と技術蓄 積を行なう開発研究施設という位置づけで,レーザーセンターを運営している。開発された装置や方法論の技術的蓄積 も既に始まっており,今後,所内外の分子科学者との先端的な共同研究を遂行するためのリソースとして提供することが 望まれる。

平成22年度現在,レーザーセンターは以下の3つの研究部門より成り立っている。

(1). 先端レーザー開発研究部門;平等拓範准教授(専任),藤.貴夫准教授(専任),加藤政博教授(UV SOR より併任) (2). 超高速コヒーレント制御研究部門;大森賢治教授(光分子科学研究領域より併任)

(3). 極限精密光計測研究部門;岡本裕巳教授,大島康裕教授(以上,光分子科学研究領域より併任)

それぞれの部門の任務は,(1) テラヘルツから軟X線にいたる先端光源の開発;(2) 主に高出力超短パルスレーザーを用い た量子制御法の開発;(3) 高空間分解および高エネルギー分解分光法の開発などである。レーザー光源の開発から新たな スペクトロスコピー,マイクロスコピー,制御法に至る統合的な研究手法を開発することを目的としている。これらの開 発研究により,他に類を見ない装置や方法論を創出して分子科学研究の重要な柱として寄与し,分子科学研究所とコミュ ニティの新たな共同利用の機会を開拓することが求められる。また,技術職員が積極的にこれらの研究開発に参加する ことによって,新たに開発された装置や方法論をセンターに蓄積し,継承していくための原動力として活躍する事が,セ ンターのミッションに照らして重要な点である。その意味で,現在1名しか配置されていない技術職員ポストが増員され ることが強く望まれる。

一方,先端レーザー開発研究部門への加藤教授(UV S OR 所属)の参加は,レーザーセンターと UV S OR . との連携によ る新しい研究分野の創出を目指すものである。平成22年度は実際に,レーザーセンターと U V S O R の現場の研究者・技 術職員が,レーザーと相対論的電子ビームを組み合わせたコヒーレント放射光源の開発に関して議論を重ね,実験に取 りかかっている。今後,先鋭化するレーザー光源を用いた観測制御技術と放射光を用いた研究との連携がさらに進むこ とが期待され,それにより光分子科学の新たな領域を創出する正のフィードバックも加速されるであろう。将来的には, レーザーセンターと UV SOR .を包括した,研究センターの設立も視野に入れた検討を行う必要も出てくると考えている。

8-3-2 共同研究の状況

平成22年度は,下記のような共同研究とその成果があった。

1).「マイクロチップレーザーのモードロック化に関する研究」

この研究で用いた全セラミック Y b: Y A G マイクロチップレーザーは,分子研で研究開発したもので,世界最高の出力 密度が得られている。静岡大学の杉田篤史准教授は,この特性に着目し,高出力モードロック発振器の可能性を探究す る目的で共同研究を行っている。研究成果はすでに一部発表済みで,更に新たな成果が出次第,改めて論文に投稿する 予定である。

2).「レーザー誘起ブレイクダウンを用いた着火に関する研究」

この研究で用いたジャイアントパルス N d: Y A G マイクロチップレーザーは,分子研で研究開発したもので世界で最も 高輝度なマイクロチップレーザーとされている。大阪大学の赤松史光教授らは,これによるレーザー誘起ブレイクダウン が,従来報告に比べ1桁以上小さなエネルギーで可能であることに着目し,本共同研究を実施している。これにかかる 研究成果は,近く論文に投稿される予定である。

参照

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